Pinto!

企業のマーケティングを支援する「ピント!」

「社外とのメールをもっと円滑に!」伝え方のプロ・山口拓朗が、メールの極意を教えます

Speakerスピーカー

山口 拓朗

伝える力【話す・書く】研究所所長。

「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。著書に、メールでのミスやトラブルを減らす方法を網羅した『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)他がある。最新刊は7月12日発売の『残念ながら、その文章では伝わりません』(大和書房/だいわ文庫)。

目次
    1. メールでのコミュニケーションは、プロでも難しい
    2. メールは分かりやすく、気持ち良く!送る前にチェックすべき3つのポイント
      1. チェックポイント①:抽象的な表現になっていないか
      2. チェックポイント②:相手に何をしてほしいか伝わっているか
      3. チェックポイント③:相手に自己肯定感が高まる表現になっているか
    3. 【番外編】メールについての気になる疑問に答えます!
      1. Q1:メールの返信スピードはどれだけ重要ですか?
      2. Q2:ミスをして相手を怒らせてしまいました。どうしたらいいですか?
      3. Q3:相手からメールが返ってこなくなってしまいました。どうしたらいいですか?
    4. 的確かつ丁寧なメールで、相手の信頼を得よう

仕事をする上で避けては通れない、コミュニケーション。

そんなコミュニケーションの中でも、最も誤解やトラブルが生まれやすい手段が「メール」です。

皆さんの中にも、メールでの連絡が思うようにいかない経験をしたことがある方が多いのではないでしょうか。特に、社外の人と連絡を取る場合は、相手の顔が見えないのでより難しいもの。メールは誰もが使う手段でありながら、トラブルなく使いこなすのが難しいのです。

今回はそんな問題を解決すべく、伝え方のプロにお話を伺いました。伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓朗さんです。メールで伝えたいことを相手にしっかりと伝え、円滑にやり取りをするためには、どのようなことを意識したらいいのでしょうか。


メールでのコミュニケーションは、プロでも難しい

――今回は、社外の人とのメールのやり取りに苦戦している方に向けて、「社外の人とメール連絡をするときに意識すべきポイント」について、教えていただきたいと思います。

山口 氏:メールでの連絡って難しいですよね。僕自身も、ちゃんと意識していないと分かりにくいメールを送ってしまうので、メールは送る前に必ず確認するようにしているんですよ。

――山口さんほどの方でも、相手に言いたいことが伝わらないことがあるのですね。

山口 氏:あります。「これってどういうことですか?」と聞き返されて、自分のメールの至らなさに気づくんですよ。メールは相手の顔が見えないし、声が聞こえないので、お互いが何を考えているのか分かりにくい。特に社外の人は、自分たちが“当たり前”だと思っている前提がないので、余計に伝わりにくいんです。

――そして、相手に言いたいことが伝わらないと、トラブルの原因になってしまいます。

山口 氏:そうですね。プロジェクトを一緒に進める相手であれば、メールでの連絡が上手くいかないとスケジュールが大きく乱れてしまうでしょうし、相手との関係性が悪くなってしまうと、最悪の場合プロジェクトの継続が不可能になってしまうこともある。

たかがメールと思うかもしれませんが、相手との関係性を構築する大切な要素だということを、まずは知っておいてほしいです。


メールは分かりやすく、気持ち良く!送る前にチェックすべき3つのポイント

――山口さんはメールを送る前に、どのようなポイントをチェックしているのですか。

山口 氏:メールは分かりやすく、受け取った相手が良い気持ちになることがポイント。僕がメールを送るときには、以下の3つの観点でチェックするようにしています。

  1. 抽象的な表現になっていないか
  2. 相手に何をしてほしいか伝わっているか
  3. 相手に自己肯定感が高まる表現になっているか

1つずつ順を追って説明していきますね。


チェックポイント①:抽象的な表現になっていないか

――まずは、「抽象的な表現になっていないか」ですね。

山口 氏:はい。日本語は抽象的な表現が多い言葉なので、知らず知らずのうちに使っている言葉が分かりにくくなっていることがあります。例えば、ポスターやWebサイトなどのデザインを外部にお願いするときのことを考えてみましょう。依頼する側にありがちな頼み方として、「かっこいいものを作ってください」とか「かわいい感じにしてください」といった表現がありますね。

――何となく、これらの言葉が「抽象的な表現」だというのは分かります。

山口 氏:そうです。「かっこいい」とか「かわいい」みたいな言葉って、結局“何も指していない”んですよ。色なのか、文字のフォントなのか、何をかっこよくすればいいのかも分からないですし、それが分かったところで、どうすればかっこよくなるのかも分からない。

――なるほど。頼まれる側にとっては、非常に難しい注文ですね。

山口 氏:難しいというか、ちょっと無理な注文ですね(笑)。どれだけ自分がかっこいいと思うものを作れたとしても、頼んだ側の求める「かっこいい」に当てはまらなければ、「そうじゃないんだよ」と言われてしまうわけですから。もっと身近な例を挙げると、「なるべく早くお願いします」という表現も抽象的で良くない表現です。

――これは日常的なやり取りで、よく出てくる表現ですね。

山口 氏:メールを受け取った側は、「なるべく早くって、いつまで?」と当然思います。送った側は「2.3日以内」というニュアンスだったとしても、そのニュアンスが伝わらず、「1週間経っても求めているものが送られてこない」といったケースはよくあります。

抽象的な表現は、メールを送る側と受け取る側との間で“認識の差”が生まれやすいので、使うべきではありません。

――抽象的な表現がトラブルを起こす原因になっていると、改めて気づかされました。このトラブルをできるだけ少なくするためには、具体的にどうすればいいのでしょうか。

山口 氏:メールを送る前に内容をよく見返し、「それってどういうこと?」という突っ込みを徹底的に入れていくことです。そして、「抽象的な表現を具体的に直す」ようにしましょう。例えばこんな感じです。

<ダメな例>
かっこいいデザインのポスターにしてください

<修正例>

  • タイトルの文字の色は紺系統
  • 全体を通して使う色は少なく(3色程度)して、統一感を出してほしい
  • フォントはポップ体のように丸い文字ではなく、すっきりした印象のもの(細かいフォントはお任せします)

これくらいまでかみ砕いて伝える。

そうすれば、受け取る側は相手が求める「かっこいい」の方向性が分かり、とても仕事がしやすくなります。ちょっとした心がけですが、意識するだけで相手との行き違いを未然に防ぐことができるので、ぜひ実践してみてください。


チェックポイント②:相手に何をしてほしいか伝わっているか

――非常に身になるお話でした。続いてのチェックポイントは、「相手に何をしてほしいか伝わっているか」ですが…具体的にはどういうことでしょうか。

山口 氏:説明するよりも、例を見ていただいた方がいいですね!こちらの文をご覧ください。

<ダメな例>
企画書をお送りします。お手数ですが、よろしくお願いいたします。

――よくあるやり取りですね。こちらは、何か問題があるのでしょうか…?

山口 氏:こういった類のメールは本当によく目にするのですが、何を「よろしくお願いいたします。」なのか、受け取る側は分からないんです。「見るだけでいいの?」「意見を求められているの?」など、捉え方がたくさんありますからね。

ここを曖昧にしてしまうと、「企画書の内容についてコメントが欲しいのに、いつまで経っても来ない」などというトラブルが起こってしまうんです。

――確かに、言われてみればそうですね。こうしたトラブルを防ぐためにはどうしたらいいですか。

山口 氏:メールを送る際には「よろしくお願いいたします。」が指す内容を示してあげる必要があります。修正例はこんな感じです。

<修正例1>
企画書をお送りします。内容をご確認のうえ、忌憚のないご意見をいただければ幸いです。お手数ですが、よろしくお願いいたします。

<修正例2>
企画書をお送りします。内容をご確認のうえ、〇〇さんにご転送ください。お手数ですが、よろしくお願いいたします。

<修正例3>
企画書をお送りします。20部印刷のうえ、明日の会議にお持ち願います。お手数ですが、よろしくお願いいたします。

――これなら、受け取る側も何をすればいいのか分かりますね。

山口 氏:そうですね。メールを送るときには、ついつい「分かって当たり前でしょ?」という姿勢になってしまいがちですが、そういった気持ちでメールを送っても言いたいことは伝わりません。相手に何をしてほしいか伝わらないと、仕事が滞ってしまう原因になるので、しっかりと相手に伝えるようにしてみてください。


チェックポイント③:相手に自己肯定感が高まる表現になっているか

――最後のチェックポイントは、「相手に自己肯定感が高まる表現になっているか」です。自己肯定感とはどのようなものでしょうか。

山口 氏:「自己肯定感」とは「自分は大切にされている」と思える心の状態のことです。なぜ相手の自己肯定感を高めることが大事かというと、人は自分の自己肯定感を高めてくれた人に対して好意的な心情を抱くからです。

つまり、相手の自己肯定感を高めると、その恩恵は自分自身に戻ってくるのです。メールで相手の自己肯定感を高めるためには、何はさておき相手の気持ちを尊重することが大切です。具体例で見ていきましょう。

<ダメな例>
納品いただきありがとうございます。確認しました。こちらでOKです。

――納品物を受け取った旨を、相手に伝えるメールですね。

山口 氏:そうです。このメールの何がダメなのかというと、感謝の気持ちが全く相手に伝わらないんですよ。例えば、

<修正途中例>
納品いただきありがとうございます!確認しました。OKです!

このように、句点の一部を「!」に変えただけでも、感謝の気持ちが少し伝わりますよね。よくビジネスメールでは「!」は使わない方がいいと言われますが、すでにお互いの信頼関係が築けているケースで、相手に好意的な感情を伝えたいときは使っていいと思うんです。

マナーももちろん大事ですが、相手に気持ちを伝えることの方がもっと大事ですからね。

――実際に見比べてみると、「!」をつけただけで印象がだいぶ変わりますね。

山口 氏:そうなんです。それに加えて、具体的に相手の仕事をほめるコメントを付け加えると、相手に対する感謝の気持ちはより伝わります。

<修正例1>
納品いただきありがとうございます!確認しました。迅速にご対応いただきありがとうございました!

<修正例2>(クリエイティブ関係の納品物である場合)
納品いただきありがとうございます!確認しました。こちらが想像していた以上のクオリティに驚いています。〇〇さんにお願いして本当に良かったです!

――こういうメールをもらったら、納品する側は嬉しいですね。

山口 氏:私たちは人間なので、いくら仕事とはいえ感情の影響を大きく受けてしまうものなんです。だから、メールを送るときには、「あなたは私にとって、仕事上とても大切な人なんだ」ということをできる限り相手に伝えることが大事。メールは対面よりも伝わる情報が少ないので、大げさに伝えるくらいがちょうどいいんです。

――感謝の気持ちは大げさに伝えること、とても大事ですね。もし、相手に対して否定的なコメントをしなければならないときは、どのように伝えるべきなのでしょうか。例えば、納品物のクオリティが低かったときなど。

山口 氏:相手との関係性にもよるのですが、「注意する内容と相手に対するリスペクトを分けて伝える」ことが重要です。

<ダメな例>
納品物を確認しましたが、ミスが多くてダメです。すぐに修正してください。

これは、納品物の否定ばかりしているので、受け取った側はどうしても気分を害してしまう。否定的な内容を伝えるときは、その前後で相手に対するリスペクトを伝えると印象がだいぶ変わります。

<修正例>
納品いただきありがとうございます!〇〇さんの仕事にはいつも本当に感謝しております

しかし、今回いただきました納品物につきましては、誤植が多いため修正いただきたく存じます。修正点を記載したものを添付ファイルで送らせていただきますので、3日後までに修正をお戻しいただけますでしょうか。

今後とも〇〇さんとお仕事をさせていただきたいと心より思っておりますので、何卒引き続きよろしくお願いいたします。

――修正例で書かれている内容は、否定されているのに何だか「頑張ろう」という気持ちになれますね。

山口 氏:そうです。メールは、ただ情報を伝えるだけでなく、相手の感情を上手くコントロールしてあげることもできるんです。メールを送るときには、パソコンの向こうに人間がいるということをどうしても忘れがちになってしまいます。

相手の自己肯定感が高まれば、仕事へのモチベーションも上がり、連絡のスピードや質が上がるもの。そうすれば、自分にとっても仕事がしやすい相手になるのです。相手のためにも自分のためにも、相手に自己肯定感を持ってもらえる表現を使うようにしてみてください。


【番外編】メールについての気になる疑問に答えます!

ここからは番外編。

メールについての気になる疑問について、山口さんに答えていただきました!


Q1:メールの返信スピードはどれだけ重要ですか?

山口 氏:なるべく早いに越したことはありません。しかし、メールにはスピードを求められているものと質を求められているものがあります。

直近の日程調整をするメールであれば、返信が早い方が喜ばれるでしょうし、1ヶ月先に使う重要な会議の資料について意見を求められたメールであれば、早さよりも意見の質が求められます。

スピードと質のどちらを重視するのかは、メールの内容を見て臨機応変に決定できるようになるといいですね!


Q2:ミスをして相手を怒らせてしまいました。どうしたらいいですか?

山口 氏:①「なぜ起きてしまったのか」②「どう対処したのか」③「再発を防止するために今後どうするか」を内容に含めて、丁寧にお詫びをしましょう。

しかし、そもそもメールのみでお詫びをするのは失礼にあたりますし、誤解が生まれやすいもの。改めて電話や対面でお詫びをするべきでしょう。


Q3:相手からメールが返ってこなくなってしまいました。どうしたらいいですか?

山口 氏:時と場合と相手との関係性によりますが、怒って「早く返信してください」といった伝え方をしてしまうと、トラブルに発展しかねません。相手側は、「連絡をしなくていい」と思っているかもしれないからです。

「こちらの伝え方が悪かったかもしれない」「あなたからの返事がないことを心配している」というニュアンスの伝え方でメールを送ると、関係性を崩すことなく解決できる場合が多いです。


的確かつ丁寧なメールで、相手の信頼を得よう

社外の人は普段顔が見えない状態で働いているので、メールを送るときには特に配慮が必要です。

誤解を生まない伝え方をするためにも、

  • 抽象的な表現になっていないか
  • 相手に何をしてほしいか伝わっているか
  • 相手に自己肯定感を高める表現になっているか

この3点を意識してチェックするようにしましょう。

社内外問わず、メールで送りたい内容を的確かつ丁寧に送れるようになれば、相手の信頼も増し、仕事がさらにやりやすくなるはず。

皆さんもぜひ、今回山口さんから学んだ内容を実践してみてください。

関連する記事を読む