2021.08.26

伏野 哲平

チームの心理的安全性を可視化しよう!今すぐできる超簡単ワークショップ「片思いマッピング」

WRITER

伏野 哲平

株式会社PLAN-B システム開発本部エンジニア

株式会社PLAN-Bに新卒入社して、未経験からエンジニアへ。複数の自社SaaS開発、ビッグデータ系の受託開発など、入社から1年半で4つのプロダクトチームを経験。AWSでのバックエンド開発を中心に、最近はフロントエンドも勉強し自作アプリの開発も。「互いの人生に良い影響を与えられるようなチーム」を作りたい想いから、開発業務だけでなく、チームビルディングワークのファシリテーションや、メンバーのコーチングなどにも積極的にチャレンジ中。スクラムマスターの社内コミュニティ、スクラムマスターギルドのメンバー。最近身長が1cmのびて185cmになった。

目次
    1. 目に見えない心理的安全性
    2. 片思いマッピングの流れ
      1. 1. メンバーに対して感じている遠慮を数値化する
      2. 2. 数値を元に会話する
      3. 3. 気づき・学びの共有
      4. 4. アクション決定(可能であれば)
    3. 実例紹介
      1. ワークをファシリテーションした感想
    4. まとめ

自称ふりかえりエバンジェリストとして社内で活動し始めてから1年ほどが経ちました。 幾度となくふりかえりを行なってきましたが、チームをより良くしたいと思い活動する中で、この「心理的安全性」がとても可視化しづらいという悩みがありました。主観的なものであり、自覚がないことも多いからです。

そこで、心理的安全性を可視化する新しいワークショップ「片思いマッピング」を考案し、社内のプロダクトチームのふりかえりで行いました。

ふりかえりを経て1ヶ月後、チームには大きな変化が!

なんとよそよそしかったプロダクトマネージャーが事業責任者とズッ友(誇張)に!

今回は、チームの心理的安全性を可視化するワークショップ「片思いマッピング」を紹介します。

こんな人におすすめ!

  • チームの心理的安全性を高めたい人
  • ふりかえりに慣れていない人
  • ファシリテーションをあまりやったことがない人
  • 準備をする時間がない人(準備いりません!)

2021年8月26日追記: Twitterやはてブから多くの方にご覧いただき感謝です!
反応やフィードバックから、わかりにくかった部分があれば追加で記載しています。

目に見えない心理的安全性

1年以上、社内でふりかえりエバンジェリストとして活動してきた結果、自分が所属するチーム以外からもふりかえりのファシリテーターを依頼されるようになってきました。 今回は、以前から何度かお手伝いしているプロダクトチームからふりかえりを頼まれ、ワークの設計からファシリテーションまでを行いました。

ふりかえりをするプロダクトチームは、エンジニア・プロダクトマネージャー・デザイナー・事業責任者・カスタマーサクセスと、合計9人の立場も所属期間も違うチームです。

事前の課題ヒアリングで「メンバーの多くがチーム内のコミュニケーションに遠慮を感じている」ことがわかりました。

例えば…

  • 相手の気持ちを傷つけないように、自分の考えを明言するのを遠慮している
  • 相手の時間を奪わないように、質問するのを遠慮している

今回のワークでは、心理的安全性が低い状態を「遠慮がある」という平易な言葉を使って表現しています。

コミュニケーション上の遠慮は、情報の伝達の誤り・遅れや、意思決定の鈍化など業務に影響をきたします。遠慮は目に見えないものです。課題として捉えづらいからこそ、放っておくとジワジワとチームの創造性や生産性は低下していきます。

そこで「お互いの遠慮を可視化して、ギャップがあれば対話をするきっかけにすること」をふりかえりの目的としました。

片思いマッピングの流れ

 

チームメンバーの相関図を作っていくワークです

チームメンバーの相関図を作っていくワークです

自分以外のメンバーへの遠慮を数値化します

自分以外のメンバーへの遠慮を数値化します

付箋やホワイトボードなどで共有します

付箋やホワイトボードなどで共有します

できた相関図をもとにチームで議論をします

できた相関図をもとにチームで議論をします

1. メンバーに対して感じている遠慮を数値化する

定性的な基準を用いて、普段のコミュニケーションをふりかえり自分とメンバーの遠慮をレベル1~7で数値化します。付箋に数字を書いてホワイトボードなどで全員で共有します。少人数なら口頭でも構いません。

遠慮を測る7つの質問
職場の環境によるので、自チームに合わせた質問に調整する必要があります。

  • 質問や相談をするのに、改めてミーティングの場を設けることが多い
  • 相手の発言を理解・納得しきれていないけど、再度追求しづらいので、質問せずに飲み込んでしまうことがある
  • 何かを頼まれた時に不安要素があるけど、自分が頑張ればなんとかなると思い、断れないことがある
  • 依頼を断る際には、資料やデータなど、明確な理由を準備する必要がある
  • 関係のある仕事が少なく、コミュニケーションをとる頻度が少ない
  • ミスをした時に相手にカバーをお願いしづらい
  • 相手が何かを言いづらそうにしているのを感じることがある

遠慮のレベル 1~7の目安
あくまで現状を可視化するものであり、数値が低い状態が最良とは限らないし、数値が高いからといってすぐ問題が発生するとは限りません。

  1. 弱音も吐けるし、気兼ねなくなんでも相談できる、相手の良くない部分をすぐさま指摘できる。これまで何度も案件に関する激しい議論をしてきている
  2. チームの懸念や方向性の話を頻繁に行なっていて、 必要なタイミングで伝えるべきことを全て伝えることができている。「遠慮を測る7つの質問」で1つもあてはまらない
  3. 案件上での相談や質問をよくする。「遠慮を測る7つの質問」で1~2個があてはまる。遠慮はあまり感じてはいない
  4. 「遠慮を測る7つの質問」で3個以上があてはまる。やや遠慮があると感じている
  5. たまにMTGで顔を合わせる/業務的な連絡は行うくらいの関係性
  6. 直接話したことはあるが、自分から直接物申すことはできない。相手がいると緊張する
  7. すごく壁を感じる。直接話すことは全くなく、上司を通じたコミュニケーションが必要

例えば…

  • Aさん→Bさん
    • 多忙なBさんに対して、Aさんは時間を取らせてしまうのが申し訳なく、細かいことの確認をためらうことがよくあったので、4とつけた
  • Cさん→Dさん
    • 最近チームに参加したCさんは、直接仕事をする機会がなかったDさんとのコミュニケーションで、深い質問ができず、認識がズレたまま仕事を進めてしまったことがあったので、5とつけた

質問やレベルの基準をチームの状況によって調整することで、できたばかりのチームでも練度の高いチームでも実施することができます。
「ある程度長いことやってるメンバーばかり」という方はもっとタフな基準に。
「そもそも心理的安全性がないと難しそう…」という方はもっとゆるいカジュアルな基準に。

例えばお互いまだまだ知らないことが多いチームなら、質問をポジティブな感じに変えてみて、レベルも何個あてはまったかに変えてみてください。継続的にやって慣れてきたら、少しずつ遠慮や心理的安全性に関わるようなタフな質問を入れていくと、よりチームの練度が高まります。

  • 普段どんなタスクをしているか知っている
  • 得意なことを知っている
  • 何があったらやる気になるか知っている
  • よく雑談している
  • 気軽に質問や相談ができる

2. 数値を元に会話する

数値化したものを元に、各々が普段どう感じていることや疑問に思っていたことを共有します。目に見えなかった遠慮が数値で可視化されることで自然と会話が生まれることも多いです。

もし会話に詰まったらこんなペアを見つけて…

  • お互いにレベルがずれているペア
  • 最もレベルが低いペア
  • お互いにレベルが高いペア
  • 仕事で頻繁にコミュニケーションをしているペア

こんな質問をしてみてください。

  • この数値にした理由はなんですか?
  • 例えば3ヶ月後どんな数値になっていたら、もっと働きやすくなると思いますか?
  • お互いにもっと働きやすくするためには、どんな活動ができると思いますか?

3. 気づき・学びの共有

ワークを通して、気づいたことや学んだことを言葉にしてメンバーに伝えます。
ワークの中で新しく気になったことを聞いてみてもいいかも知れません。
付箋に記入して共有してもいいですし、口頭でも構いません。

発言例

  • 自分は遠慮してなかったのにDさんは自分に対して遠慮していることを知った(Cさん)
  • 自分が思っていたより相手に対して踏み込んだコミュニケーションができていないことに気づいた(Bさん)

4. アクション決定(可能であれば)

議論をするなかで、課題に対してチームでできるアクションがあれば、実行して今後の改善に活かしましょう。

アクション例

  • 単純な会話の量を増やすために、席替えを行う
  • 質問や相談をしやすいように、いつでも相談OKな時間をチームで決める
  • 遠慮を感じた時に、メンバー同士で指摘しやすいような共通言語を作る
  • リモートワークであれば、オンライン会議で一緒に作業するためだけに集まる時間を作る

実例紹介

実際にチームで起きたことを紹介します。

ワーク風景

人数が多かったので、いきなり相関図をかくのではなく付箋で出してもらいました

SさんMさんペア
プロダクトマネージャーのSさんは、事業責任者のMさんに対して、相手の立場や価値観を慮るあまり、どこまで口を出すべき迷うことが多く、チームに対して指示が出しにくいことを伝えてくれました。事業責任者と議論を普段から交わせるように、アクションとして、席替えをすることで物理的距離を近づけて単純な会話量を増やすことが決まりました。
TさんOさんペア
カスタマーサクセスのTさんは、カスタマーサクセスと他メンバーの間で情報格差があり、疎外感を感じていることを伝えてくれました。 議論する中で、チームの中でそれぞれがどういう役割を持っているかがお互いにわかっていないことに気づきました。メンバーが役割を全うするために必要な行動を遠慮なく起こせるように、アクションとして、メンバーの役割定義シートを作ることが決まりました。

ワークをファシリテーションした感想

ワーク全体の時間としては、
遠慮の数値化:10分
数値をもとに会話:60分
気づき・学びの共有+アクション決定:20分
で今回のチームの規模(9人) では、90分程度でできました。
4~5人であれば60分程度でできると思います。

遠慮という目に見えないものを数値化したことで、自然と全員が気持ちを口に出してくれるようになりました。リモートワークが増え、ふりかえりをオフラインでやるのは久しぶりでしたが、面と向かったコミュニケーションでどれだけ気持ちが伝わるかを肌で感じました。

最後にはチームメンバーそれぞれが「なかなか言えず抱えていた気持ちをチームに打ち明けることができ、スッキリした」と口にしてくれました。

ワークが終わり約1ヶ月が経ちましたが、明らかにワークをきっかけに チームの団結力が高まり、コミュニケーションの積極性が増しています。
「〇〇さん、(遠慮が)出ちゃってますよ」という口にしやすい共通言語を作り、お互いに指摘しあっているようです。 メンバー全員が考えを示し、プロダクトを進めるべきだという意識が広まり、自身の考えを抵抗なく明言できるチームになっています。

今回のワークをふりかえってみると、以下のポイントが浮かび上がってきました。

  • 遠慮の数値化の基準は、人の性格や仕事のスタイルによって解釈が分かれるので、職場環境に合わせて対応させる必要がある
  • シンプルワークなので、オンラインでもmiroなどのホワイトボードアプリを使えば簡単にできる(3〜4人なら口頭で十分できる)
  • 数値が見えることで自然と会話が生まれるので、積極的なファシリテーションが必要なく実施しやすい

まとめ

今回のワーク「片思いマッピング」は、社内のスクラムマスターギルドで相談しながら作り上げました。手前味噌ですがチームの団結力を高める素晴らしいワークショップを作ることができたと思います。社外のスクラムマスターのコミュニティで実践したり、自分たちでも試したり、ブラッシュアップを続けています。今後もいろいろなチームで試していきたいなと考えています。

「遠慮」はどのチームにもあります。

目に見えないため課題として認識しづらく、自覚すらないことも多いです。
今回考案したワークショップ「片思いマッピング」は、そんな「遠慮」にチームで向き合いやすいような枠組みになっています。

シンプルで簡単なワークなので、明日にでもチームで試してみてください!