MarketingOpsのすゝめ。マーケティング×エンジニアリング

DevOps(あるいはdevops)やDevSecOps、MLOpsなど、昨今様々なx(好きな文字を入れる)Opsな職種や役割が生まれています。それぞれ解説は省きますが、ざっくり言うと、左側(Dev, DevSec, ML, x)の領域のデリバリーや運用(Ops)の流れをよどみなくするお仕事です。色々なリードタイムを短くする、エラーや事故の発生を防ぐあるいは復旧を早くする、関わる人々が不安なく業務に当たれるなどなどを目的とします。業務フローやオペレーションの変更で対応できることももちろんありますが、エンジニアリングによって成し遂げる文脈も強いです。

いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)を、デジタイゼーション(一部業務のデジタル化)やデジタライゼーション(ビジネスプロセスやプロダクトのデジタル化)だけで終わらせないためには、ビジネスや業務だけでなく、組織や文化をエンジニアリングでハックできる人材をxOpsとして育成・採用してみるのはいかがでしょうか。

PLAN-Bでは自社プロダクトの開発や情シスにエンジニアがいるのはもちろん、マーケティング部にもエンジニアが在籍しています。マーケティングエンジニアと呼称する会社もありますが、弊社ではプロダクト開発でdevopsの役割があることもあり、開発やマーケティングなどの「現場」を「技術」でハックして流れをよどみなくする思いを込めてMarketingOpsと呼んでいます。

マーケティング領域をエンジニアリング

PLAN-Bはデジタルマーケティング領域のサービスや、SaaS(SEARCH WRITECast Me!)の提供を行っています。マーケティング部では主に

  1. リードジェネレーション: 見込み顧客の獲得
  2. リードナーチャリング: より興味を持ってもらう
  3. リードクオリフィケーション: 商談を作る

をカバーしており、マーケティングチームやインサイドセールスチームと共にMarketingOpsとしてエンジニアがいます。

リードから商談までの流れ

プロダクト開発のチームや、主にシステム開発・運用の組織にいるエンジニアとはいささか業務内容が異なります。弊社はオウンドメディアを持っている(このWebサイトです)のでシステム開発や改修もありますが、多くはマーケティング・インサイドセールス業務の運用や改善が中心です。人によっては情報システム部門との仕事の近さを感じるかもしれません。

昨今はMA(マーケティングオートメーション)やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)のビッグウェーブが来ており、マーケティング領域でのデータ活用や自動化などの攻めの部分でも、データの品質やシステムの信頼性など守りの部分でも、エンジニアリングの重要性が増しています。最低限という意味では、toBのSaaSではカスタマーサクセス/サポートが無料・有料含め手厚いことが多く、エンジニアがいなくても活用は可能です。何かあった時には情シスやプロダクト開発の部署に依頼している会社もあるでしょう。

しかしマーケティング部に専属のエンジニアがいることで、より一層マーケティング領域を加速させることができます。バリューストリームにおいて最初の部分にあたるマーケ領域が加速することで、引いては事業全体の加速に繋げることができます。ざっと思いつくだけでも、こんなに多くのメリットがあります。

施策実施のリードタイムが圧倒的に短い

  • 何らかの施策実施時にエンジニアの手が必要になった際、他部署に依頼をすると先方でのスケジュール調整や予算(工数)調整が発生することが多い。もし自部署内にいれば調整が不要なのでまず着手が早く、途中で問題が起きても相談しやすいので完了も早い。
  • 新規事業やSaaSなどと同じく、マーケティング領域も不確実性が多く、「施策実施から効果検証を早く多く回せる」「施策の実施順位(優先順位)を柔軟に変えられる」ができると理想的。アジャイルな方法論とも相性が良い。
  • LP(ランディングページ)やオウンドメディア、フォーム最適化などのデザイン変更・新機能実装を部署内でできるので、アイデアからリリースまでのリードタイムが短い。

SaaS間の連携とデータマネジメント

  • MA領域やCDP領域、あるいはSFA領域やCS領域など、それぞれに特化したSaaSを複数使うことが増えている。それぞれのデータ連携や設計、運用、抽出・可視化などでエンジニアリングスキルが必要とされることが多い(あればあるほどできることが増えたり、運用工数を下げたりできる可能性が上がる)。
  • 顧客データなどセンシティブなものを扱うので、DMBOKなどデータマネジメントの知識や経験が役に立つことが多い。仕組みやデータの造詣が深いと、マーケティング領域以外(営業やプロダクトなど)の担当者やエンジニアと話す場合もコミュニケーションがスムーズ。

DMBOKの領域

業務改善・自動化の選択肢が増える

  • 各SaaSに機能としてノーコードやローコードな自動化の仕組みがある場合、エンジニアが先行して理解・検証することで、他のメンバーへ展開・自走するまでの時間を短くすることができる。
  • 既存機能でどうにもならない場合は、自前でツールを作ったり他のサービスを導入・活用したりすることで解決を図ることができる。
  • これらSaaS自体の機能と、フルスクラッチやハーフスクラッチとを引き出しに持っていることで、課題や施策に対するソリューションの選択肢が広がる。強い制約下で既存機能を使うか、開発・運用工数がかかっても自前で仕組みを用意するか、ROIを考えて手段を選べる。

実際の業務

では実際にPLAN-BのMarketingOpsは何をしているか紹介します。ざっくり分けると3つの業務がよくあります。

オウンドメディアの改修

本Webサイト(PINTO!)の改修です。直接HTML/CSSのコーディングをすることもあれば、CMSの改修、他サービスのタグの導入・検証なども行います。SEO対策や回遊率・CVRの向上などリードジェネレーションのマーケティング施策における改修の多くがこの範囲におさまるので、優先順位にのっとってガンガン進めていきます。一方で、CDNやアーキテクチャ、インフラなどについては他部署のエンジニアに依頼したりモブしたりすることもあります。

オウンドメディア改修

デザイン改修だけでなく機能追加なども行います。

マーケティング業務改善

HubSpotやMarketo、Salesforceとの連携や、サービス間でどのデータをどんな形式・頻度で連携するかの設計・実装、定期的なデータの監視やクレンジングなど、マーケティングからインサイドセールス・フィールドセールスに渡すところまでの全般に関わります。 新たに見たい指標のために各サービスのノーコード・ローコード系機能を使って実装したり、業務フロー改善のために自動化の仕組みを整えたりもします。細かいところでは、命名規則やタスクマネジメントの改善をファシリテーションすることも。

データ抽出・可視化

マーケティング業務改善を通じてデータ構造や設計・仕組みにも詳しいので、例えば「初回接触施策別の受注率」や「マーケティング施策別ROI」がわかるダッシュボードを作ったり、運用にのせるサポートをしたりします。マーケティング部内でもエンジニアしかできない・使えないものを減らし、自分たちでデータ活用をできるようデータの民主化やトレーニングも行います。
自社SaaS側のデータや、カスタマーサクセス・サポートで持っているデータをマーケティングのセグメントとして使うこともあるので、他の事業部や情シスと連携することも多いです。

必要なスキルセット

技術の「深さ」はプロダクト開発のチームやdevopsには及ばないかもしれませんが、マーケティングに関するドメイン知識と技術の「広さ」、またエンジニア以外との関わりが多くなるためソフトスキルも求められます。

  • マーケティング、インサイドセールス領域のドメイン知識
  • 開発・改善
    • Web系の知識
      • Cookie (1st/3rd), HTTP(S), CDN, SEO, …
    • フロントエンド (HTML, CSS, JavaScript)
    • デザイン少し (Photoshop, XD, Figmaなど)
    • CMS (WordPressならPHPも)
    • Google Analytics, Google Tag Manager, Google Search Console
    • 会社で利用しているサービスのノーコード、ローコード機能活用
  • データマネジメント、データ活用
    • DMBOK
    • データクレンジング、ETL
    • 可視化ツール (MetabaseやTableauなど)
    • SQL (MetabaseやBigQueryなどでも使う)
  • その他
    • プロジェクトマネジメント
    • アジャイルの知識、経験
    • 資料作成力 (提案資料、マニュアル、トレーニング資料などなど)

事業を加速させるxOpsとしてのエンジニアキャリア

PLAN-Bで実際に働くMarketingOpsの例を紹介しました。
マーケティング部にエンジニア一人で孤独に見える方もいるかもしれませんが、実際にはプロダクトチームのエンジニアや、全社的な基盤に関わるエンジニア、フロントエンドエンジニアとの横の繋がり、スクラムマスターと進め方の相談など、社内のエンジニアリングをベースにした色々な人たちと絡む機会は多いです。普段から近い距離を作っておくことで、マーケティング部内で解決しづらい課題を相談しやすいようにしています

マーケティング領域に限らず、これからは各事業領域×エンジニアリングでの業務改善やイノベーションが加速していくと思います。それが果たして何Opsかはわかりませんが、「プロダクトチームでの開発・運用」や「情シスとして全社を支える」以外のエンジニアのキャリアの選択肢としても参考になれば幸いです。