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2018.07.03

勝見 隼人

MARKETING

中国が唱えるデジタルイノベーションの流儀〜最新動向レポート2018〜

目次
    1. Google 「Acceleration Summit 2018」〜いま中国で起きていること〜
    2. Googleとは異なる特性データを駆使するDidi Chuxingとは
    3. Didiが大切にするもの 〜Big Data from Multi-resource Mobile sensing〜
    4. 74カ国に進出、恐るべきXiaomiのIoT革命
    5. まとめ:経営理念を体現するということ

今や世界の時価総額ランキングTOP20にランキングしている企業は全て米国と中国の2大大国だということをご存知でしょうか?

1990年代以降、圧倒的な経済成長を成し遂げている中国が今どのように加速しているのか、北京で開催されたGoogle社の「Acceleration Summit 2018」に参加しました。

今回の記事では上記イベントAPACでのレポートに加えて、スピード/スコープ/スケープを重視し、圧倒的な成長を遂げている注目企業、「Didi Chuxing(ディディチューシン)」、「Xiaomi(シャオミ)」への訪問についても触れていきます。


Google 「Acceleration Summit 2018」〜いま中国で起きていること〜

サミットはGoogle社が考える「今」と「未来」にフォーカスし、各プロダクト責任者がセッションを行うという3部制のプログラムで構成されていました。

当日、日本からの参加者はLINE執行役員である葉村氏と弊社の社員2名ほどだったでしょうか。他には東アジア、欧州の広告代理店が参加しており、全体で200名程度の参加者で賑わっていました。

私が思うに、今回Google社が伝えたかったトピックスは大きく3つで「Digital Ad Spending Share」、「Mobile」、「Machine learning」だと捉えています。

「Spending Share」や「Mobile」については国内でのセミナーやカンファレンスを通じて十分に理解が広がっているかと思いますが、「Machine learning」についてはいかがでしょうか?

現在中国の大手企業の大半はマシーンラーニングを取り入れており、米国や欧州各国企業を上回っているという事実があります。この背景として、中国では既存システムや処理すべき業務プロセスが少なく、AI導入や統合が比較的容易だからではないかと考えられます。

Auto MLには中国オリジナルのものなどさまざまなものがありますが、今回Googleの人間が数多く登壇する中で一番多く発したキーワードは「TensorFlow(テンソルフロー)」でした。「TensorFlow」とはGoogleが開発したオープンソフト公開型の機械学習ソフト。簡単に言えばこのアプリケーションを活用するだけで開発費を抑えてディープランニングを開発できるというツールで、現時点で1,100万のダウンロード数を誇っています。

具体的にどんなことができるのか?についてはウィキペディアにも記載されているのでぜひ御覧下さい。

会場風景_1

会場風景_2

登壇者であるGoogleのLeon Liは言います。マシーンラーニングとGoogleクラウドの連携がAlphaGoやGoogleデータスタジオにも活かされており、これらはCoreユーザーの定義にも役立っている、と。

AIとビジネスは切っても切れない関係であり、今や中国におけるマシーンラーニングは未来の価値を見出すために必要な予測LTVテストなどにも大いに活用されています。

今回詳しくはお伝えしませんが、Partner sharing session内で話題性のあったものとして「AMP(Accelerated Mobile Pages)」が挙げられています。いずれの企業もAMPベースでのサイト制作とアドワーズの自動入札の連携で成功をおさめているケースが多かったことが強く印象に残っています。

現在世界では60億のページがAMPベースで制作されており、中にはAMP対応後に読み込み速度が286%、CVRが36.9%改善されたケースもありました。

上記は日本でも十分に活かせる手法でもあるため、サイト制作と運用部隊を社内に抱えている代理店などはぜひ活用してください。


Googleとは異なる特性データを駆使するDidi Chuxingとは

今回サミット参加以外の目的として中国北京に本社を置く企業2社への視察も兼ねて北京へ訪問しましたが、うち1社が滴滴出行(以下Didi)です。

Didiとは中国の大手ライドシェア(相乗り)企業として中国の400都市4億人以上のユーザーへ交通サービスを展開しており、米国の企業であるウーバー・テクノロジーズが運営する自動車配車アプリUber(ウーバー)に似ています。

実際に2016年8月にDidiはUberの中国事業を買収しており、この買収を以てDidiの企業価値は500億ドル相当と推定され、中国のインターネット大手企業であるアリババ、テンセント、百度全てから投資を受けた唯一の企業となりました。

引用:Didi Chuxing, Taxify, Grab, DT Caijing

Didiのオフィスは私の想像を遥かに超えており、データビジュアライゼーションを駆使した最先端を匂わす雰囲気でした(昨年サンフランシスコのシリコンバレーに訪問したのですが、それらの企業のオフィスよりも、街中にあるLinkedInよりも進んでいると感じました)。

さまざまな分野から若手を採用していることもあり、平均年齢は30歳未満の非常に活気のあるオフィスで、2018年の段階では5,000人以上が勤務する大企業です。※残念ながらオフィスの撮影はNGでした。

先ほどお伝えしたデータビジュアライゼーションというものをもう少し詳しく説明します。Didiは単にライドシェア事業を展開して収益を得ている企業ではなく、ライドシェアするために最適な車を開発することを目的としています。そのためのビッグデータをデータビジュアライゼーションで可視化し、分かりやすく表現しているのです。

例えば、夕方19:00頃の街の様子が大きなスクリーン上に映し出されており、そこには自宅に帰る人、飲み会に向かう人など、アプリを立ち上げタクシーを待っている多くのユーザーが液晶上で赤く点滅表示されています。

これらに対して、Didiの基地局は約4,100万人のドライバーに配車司令を送ります。すると、ものの数分でタクシーを待っていた人々の集合体は分散し、緑に点滅(=つまりタクシーに乗車)するのです。(下図)

他にも交通のインフラを整えることを目的に、上り線が混んでいる場合はリバーシブルレーンというリアルタイム手法を用いて下り線の車線数を減らし、上り線の車線を多くするなど今の日本では想像ができないことばかりでした。

余談ですが、これだけの魅力があれば十分な企業ブランディング力となり、若手の採用には困らないだろうと感じます。


Didiが大切にするもの 〜Big Data from Multi-resource Mobile sensing〜

ゼネラルマネージャーのJason HuangはDidiにおける年間乗車数は設立6年目でありながらも5億を超え、投資事業にも積極的だと話します。また現在DidiはIPOを控えています。加えて2020年までに100万台のDidiの車をリリースする目標を掲げており、これはテスラ社の約4倍にも匹敵すると言われています。

これらDidiの圧倒的成長を支えるビッグデータとは一体どこから供給されるものなのでしょうか?アルゴリズムのエキスパートエンジニアであるWeili Sun曰くこれらは主に3つで形成されていると話します。

1つ目は「ユーザーレポート」。Didiには約4,100万人のドライバーが存在しますが、これらのドライバーはDidiの従業員ではなくドライバー登録を行っている一般ユーザーです(実際に私達が街中でDidiを使い配車依頼をした際も休日ゴルフ帰りのおじさまが半袖短パンでお迎えに来てくれました)。

これら一般ドライバーから送信される乗降時間、お客様の年齢や性別などのデモグラフィックデータなどはDidiにとって貴重なデータリソースとなっています。

2つ目は「社内搭載カメラ」。こちらに関してはどのように活用されているのかは明かされませんでした。

そして3つ目が「GPS」。位置情報で取得したデータと政府が保有するデータを掛け合わせることで見えてくるインサイトを顧客価値に変えていると話します。

グラフ

Didiは今後「WeChat」との連携も本格化する予定で、共有→予約→支払いまでを全てWeChat Payで実現する構想を描いています(実際に北京でのWeChat Pay普及率は凄まじく、街中ではほとんどの若者がWeChat Payを活用しておりQRコードの文化を目の当たりにしました)。

先程お伝えしたように、DidiはフォルクスワーゲンやBYDグループなどとライドシェアに最適な車を開発するためのジョイントベンチャーを設立しており、未来への道を切り開きつつあります。そんなDidiが一般的な自動車製造メーカーとは似て非なる点をJason Huangはこう答えています。

一般車は運転手に心地良さを。Didiは乗る人にエクスペリエンスを。”

彼らはいつかGoogleを越えることを望んでいますが、桁違いのスピード/スコープ/スケープを体現している彼らならその未来はさほど遠くないと感じます。


74カ国に進出、恐るべきXiaomiのIoT革命

Xiaomi、皆さんはご存知でしょうか?

一時期の中国市場ではアップルを抜き、スマートフォンメーカーとして世界から脚光を浴びていたものの市場飽和により売上が低迷、その後短期間かつ驚異的なスピードで革命を起こし、IoT事業などを以て約3年で再び世界トップシェア4位にまで復活劇を遂げたスーパー企業です。

小米科枝(以下Xiaomi)は2010年にスマートフォンメーカーとして創立されアンドロイドベースのスマートフォンを低価格かつハイエンドで提供することにより、主に若者の間で人気となり2014年頃までは急成長を遂げてきました。

しかしファーウェイやOPPOといった競合による類似商品のリリースなどもあり、Xiaomiのシェアは次第に奪われ、かつての勢いは衰えていきました。

それでも2016年頃よりXiaomiは総合家電メーカーへと一気に転身し、IoTを活用しながら家電ショールームと呼ばれる「小米之家」を中心に主にオフラインでのタッチポイントを拡大していきます。それらの影響もあり、2018年にはトップシェアに返り咲き、今後もさらに成長を遂げることが予測されています。

そんなXiaomi本社(北京)へも視察に行ってきました。オフィス自体の外観は古く、内装がフルリノベーションされている造りとなっていました。

オフィスのあちこちに製品ポスターが飾られており、そのどれもがアップルの製品ポスターとそっくりそのままだったことに驚きました。Xiaomiはアップルのマーケティング戦略を模倣し、成功を勝ち取ったことでも有名で、アップルと比較されるケースが多々あったというのも事実です。

Xiaomiは総合家電という位置づけですが、枕や玩具にもIoT技術を活用しており、事業面においても現在90社に投資をしており、反面でエコシステムにも力を入れるなど、扱う領域は多岐にわたります。

これ程多岐にわたる事業を展開できる背景としては、若手に対して新規事業立案のチャンスを与えており、毎月40〜50のアイデアが出てくるという社内における事業推進力も大きく起因していると考えられます。

これらのビジネスモデルを指してXiaomiのLi Weixingは「トライアスロンビジネスモデル」と称しています。現在驚異的なスピードで74カ国に展開を進めているXiaomiですが、新たな国へ進出する際に重要視する指標は対象国におけるGDPとインターネット普及率に限るという点もまさにスピードを体現していると感じます。

イノベーション、デザイン、ファンが私達の全てと掲げるXiaomi、今後の動向にもますます期待しています。


まとめ:経営理念を体現するということ

今回中国北京ではすぐに持ち帰って活かせるもの、中長期的に活かせるもの、総じて非常に得るものが大きなことばかりでした。

Didi、Xiaomi以外にも中国にはアリババやテンセントなど魅力的な企業が数多くありますが、これらの企業がどうして成功しているのか?当日フライトキャンセルが発生し、(翌日の経営会議に参加できなかったことは大きな声では言えませんが…)持て余した時間で考えていました。

要因はさまざまですが、いずれの企業も共通していた点があります。

それは自分たちが掲げた企業ミッションに対して今進捗が何%なのか?ということを明確にしていた点です。企業ミッションも普段皆さんが半期ごとや年間で掲げるビジョンや目標と同様に追えるということ。

掲げて終了ではなく、進捗を以て追い続けなければならないということ。これこそが未来の成長に繋がり加速スピードを上げてくれるのだと考えます。

皆さんの勤めている企業は掲げたミッションに対して進捗率を追っていますか?もし明確でないなら、今一度見つめ直す時かも知れません。