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2017.12.27

西岡 彩織

DMP/AI

「アクセス解析」から「ユーザー分析」へ|ビッグデータにまつわる2017年市場動向を振り返る

目次
    1. 「アクセス解析」が重宝されてきた背景
      1. アクセス解析の巨人Googleアナリティクスも「ユーザー分析」へシフト
    2. 「ユーザー分析」への追い風はツールの進化だけではない
      1. 政治:個人情報保護法改定は実は追い風
      2. 経済:EC市場拡大とリテラシーの高い消費者が追い風
      3. 社会:デバイスの多様化はマーケッター泣かせ、だがテクノロジーの発達は追い風
      4. テクノロジー:ITPで激震、だがトラッキング技術の発達は追い風?
    3. 上記を踏まえてWeb担当者が考えるべきこと
      1. その分析、”本当に”ユーザーを理解できていますか?
      2. 「サイト体験」ではなく「インターネット体験」を分析できていますか?
      3. 「1人のユーザー」として分析できていますか?
    4. まとめ

2017年も年の瀬ですね。時期的に、ご自身の業務やビジネスについて今年一年を振り返っておられる方も多いのではないでしょうか。

私自身は「Juicer」というDMPの開発をしており、2017年はマーケティング施策へのビッグデータ活用について広く観察してきたつもりです。その中で感じた、2017年の大きなトレンドの1つとして、「アクセス解析」から「ユーザー分析」への進化というものがあります。

本記事では、ビッグデータ活用にまつわる市場動向を踏まえながらこのトレンドを振り返ってみたいと思います。


「アクセス解析」が重宝されてきた背景

まずアクセス解析を振り返る意味で、一般的に用いられる指標どうしの関係性を図にしてみると下記のようになります。

指標どうしの関係性

  • ユーザー … インターネットユーザーそれぞれのこと。
  • セッション … 簡単にいうと「サイトへの訪問」1回のこと。
  • ページビュー … サイト内の特定ページが表示された回数。

それぞれの指標について厳密にはもっとたくさん条件がありますが、概念の話をしたいのでここでは割愛します。

そもそもマーケティング活動におけるアクセス解析の目的は、自社サイトの訪問ユーザーは何に興味があり、何が満たされれば自社の製品やサービスを利用してくれるのかを理解することだとすると、「セッション」よりも「ユーザー」の方が分析に適しているように見えます。

しかし、本当に「1人の人間」としてユーザーをトラッキングするには様々な障壁があり、Googleアナリティクスをはじめとする解析ツールではこれまで「セッション」ベースの解析が採用されてきました。

この「アクセス解析業界の常識」ともいえる部分に変化があったのが「ユーザー分析」へのシフトです。


アクセス解析の巨人Googleアナリティクスも「ユーザー分析」へシフト

「ユーザー分析」へのシフトの傾向が顕著に見られるのが、アクセス解析ツールとして市場を牽引してきたGoogleアナリティクスのアップデートです。

ユーザーのサイト訪問以降の行動を時系列で分析する「ライフタイムバリュー」機能や、任意で作成したユーザーセグメントごとに分析ができる「ユーザーリスト」「ユーザー」機能など、従来主に用いられてきた「セッション」ではなく「ユーザー」指標を主語とした分析を行うための様々な機能がリリースされてきました。

「セッション」という指標をアクセス解析業界に普及させたGoogleアナリティクス自体が「ユーザー分析」へシフトしはじめたということは、新たなフェーズの始まりを意味すると思うのです。

上記で述べたように、「アクセス解析からユーザー分析へ」の意味合いはアクセス解析の否定ではなく、上記の障壁を取り除いたり低減するような追い風が吹き、「アクセス解析」というニュアンスにとどまらない多角的な分析が実現できるようになってきたというポジティブな変化を指しています。


「ユーザー分析」への追い風はツールの進化だけではない

分かりやすい変化としてツールのアップデートを挙げましたが、ビッグデータを活用した「ユーザー分析」を取り巻く変化はこれだけではありません。市場動向について、マーケティング情報メディアらしく政治・経済・社会・テクノロジーの4観点から振り返ってみたいと思います。

ちなみにこれはPEST分析(Politics、Economy、Society、Technologyの頭文字)と呼ばれるフレームワークです。詳細は割愛しますが、もっと知りたい方は「知っておきたい9つのマーケティングフレームワークおさらいをご覧ください。

ユーザー分析のキーワード


政治:個人情報保護法改定は実は追い風

今年5月に施行された改正個人情報保護法。改定されたポイントはたくさんありますが、データ活用の文脈で注目すべきは「匿名加工情報」の登場です。簡単にいうと「個人情報を加工して、個人を特定したり加工する前の状態に戻したりすることができないようにした情報」のことで、一定の条件を守れば本人の同意をとらなくても自由にデータを利活用できるものです。

個人情報保護委員会が発行している「個人情報の利活用と保護に関するハンドブック」にも「新事業や新サービスの創出や、国民生活の利便性の向上が期待されます」とあり、データ活用の可能性を広げる意図で導入されたことが伺えます。

今後、この改定をうまく活用できるかによってサービス品質が左右されそうです。ただ、依然としてグレーゾーンの領域もあるため、今後の変化にもキャッチアップしておきましょう。


経済:EC市場拡大とリテラシーの高い消費者が追い風

総務省の「2017年版 情報通信白書」の概要によると、一般消費者のパーソナルデータ提供に対する意思として「提供してもよい」が「提供したくない」を10%以上上回っています。

特に「ショッピングサイトなどはある程度しょうがないと思う」や「個人情報を渡してサービスを受けている、ギブ&テイクだと思う」というコメントもあり、自身についての情報を提供することで対価や相当サービスを得られるという認識が浸透しつつあるといえそうです。

上記で触れた「匿名加工情報」など、そもそも個人情報に相当しないデータを活用する場合でも、消費者の感情的・心理的側面に配慮する意味でこちらの調査結果は追い風ではないでしょうか。


社会:デバイスの多様化はマーケッター泣かせ、だがテクノロジーの発達は追い風

クロスデバイスソリューションを提供するTapad Inc.の発表によると、1人当たりのデバイス保有数は平均で4台という調査結果もあるそうです。

また、SNSはスマホ、じっくり商品を検討したいときはPCといったようにデバイスを使い分ける方も多いと思います。この背景を踏まえた上で分析を進めなければ、本当の意味で「ユーザーを理解する」ことは難しくなってきました。

ビジネス視点ではマーケッター泣かせの社会的背景ですが、デバイスやブラウザをまたいで(統合して)分析できるクロスデバイステクノロジーの普及という追い風があります。

先に触れたTapad Inc.では2017年9月より日本でのサービス提供を開始するなど、推定データ・確定データを組み合わせることでデバイスを統合して分析できるクロスデバイスソリューションの利用が加速しそうです。

クロスデバイステクノロジー


テクノロジー:ITPで激震、だがトラッキング技術の発達は追い風?

Cookieによるトラッキングの文脈で2017年話題になったのが、Safari11.0に追加されたトラッキング防止機能「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」です。有効になっている場合、ユーザーが特定のサイト(ドメイン)で何らかの操作を行なってから24時間が経過すると、サイト(ドメイン)をまたいでのトラッキングができなくなります。

特に、広告施策を行なっている場合のコンバージョン計測など、複数のドメインをまたいでのユーザー分析が必要となるケースにおいては大打撃といえるでしょう。

新しいバージョンのSafariに搭載されたという点で現状ではまだ顕著な影響は聞かれませんが、本バージョンの普及によって影響度は大きくなってくるものと予測されます。

Cookieの利用と規制は今後もイタチごっこの様相となることが予想されますので、Cookie以外の情報をキーにしたユーザー分析を検討し、来たる変化に備えておく方が賢明かもしれません。その意味では、先に述べたクロスデバイスソリューションの重要性と効果が更に高まってくると予想します。


上記を踏まえてWeb担当者が考えるべきこと

市場動向を振り返って感じることとしては、「ユーザー分析」のための可能性が増す分、適切なツール・データ・情報を選び取るリテラシーが重要になってくるということです。

私自信がDMP「Juicer」の開発にあたり、チームやプロダクトに問いかけてきたことをまとめました。ご自身にあてはめて振り返っていただき、2018年のデータ活用のヒントになれば幸いです。


その分析、”本当に”ユーザーを理解できていますか?

Googleアナリティクスの例で挙げた「セッション」と「ユーザー」のように、技術的な可能性が広がる分、目的に応じて適切な指標を採用することが求められます。ただツールを使うだけでなく、実現したいことに合わせてツールもデータも選んでいくことがますます重要になると考えます。


「サイト体験」ではなく「インターネット体験」を分析できていますか?

ユーザー分析をするには、自社サイトでの行動を分析するだけでは不十分です。自社サイトの訪問ユーザーが自社サイト以外に競合サイトも見ている可能性は?既に他社の製品を利用しており、スイッチングを検討している段階という可能性は?

アクセス解析ではなくユーザー分析を採用することの要点は、当然ユーザーを主語におくこと。ユーザーが他にどんなサイトを見ているか、どんなことに興味のある人なのか、理解するために自社のデータだけではなく、外部データ(3rd party data)の活用も検討してみましょう。

インターネット体験の分析


「1人のユーザー」として分析できていますか?

正直この点についてはJuicerも目下開発中なのですが、先に述べた市場動向を踏まえると、「セッション」から「ユーザー」へのシフトだけでなく、更にそのユーザーの様々な地点での情報を「1人」に統合してゆくことが必要になってくると感じています。デバイスやブラウザの統合を自社だけで行なうには正直まだまだハードルの高い側面がありますが、外部データ(3rd party data)やテクノロジーを活用した統合も視野に入れてみてはいかがでしょうか?


まとめ

2017年12月現在、「アクセス解析」「ユーザー分析」それぞれのキーワードの月間検索数(推定)を調べてみると、「ユーザー分析」が検索された回数は「アクセス解析」の1%程度という事実・・・「ユーザー分析」を提唱してきたJuicerの開発メンバーとしてはちょっとショックです。

「ユーザーを分析したいけど・・・難しいからアクセス解析で代用」ではなく、もっとシンプルに自社のユーザー、見込み客、顧客を分析することができる世界を実現したいと感じます。

2018年は本記事で述べたような変化がより目に見えるようになり、ユーザー分析の手段にも更に変化が訪れると予測します。

「こんなデータを持ってるから」「技術的に〜だから」ではなく「ユーザーを知るためにこのデータが欲しい」「こんな情報があれば、もっと素敵なコミュニケーションがとれる」という、ユーザーを主語としたマーケティング戦略を実現できるよう、DMP「Juicer」も進化してまいります。

データ活用についてのご相談、ご要望がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。